since 2000/10/30    
最新情報へ受託調査・研究実績へ事業内容へ地域づくりへデータ活用メモへ企業概要へリンクへ問い合わせへ
地域づくり > 地域づくり事例 > 過去の記事




 過去の記事 

 3、NPO法人 夢未来くんま(静岡天竜市)
 副理事長 大平展子さんへのインタビューから
 私たちの村おこしは、今から18年くらい前に始まりました。女性たちが食文化に目をつけて活動していたこと、商品化できそうだと感じたことが村おこしにつながりました。
●「おじいさん、おばあさんの知恵を受け継ごう」
大平さん
●副理事長 大平さん

 昭和56年に熊婦人会が「くんま、生活とその文化」という冊子を作り、昔からある熊の郷土料理、保存食、行事食をまとめました。私たちは味噌仕込みさえ受け継いでいなかったし、蕎麦を打てる人もいなかったので、地域の宝物を子どもたちに伝えられないということで、おじいさんやおばあさんたちに取材して、子どもたちに伝えようと作ったのが「くんま、生活とその文化」です。
 例えば、農協は「小豆は7月のいつごろ蒔け」「大豆はいつごろ蒔け」など目安で言うのですが、桜が咲く時期が10日早かったり遅かったりすると当然その年の植物の動きは変わってくると思うのです。ネムの花が6月20日頃咲くので、ネンブリというのですが、「ネムの花が咲くときに小豆を蒔きなさい」「ゆりの花が咲くときに大豆を蒔きなさい」というように、お年寄りは植物や季節の変化を一番確実に伝えている生き物からのいろいろな知恵を持っていたので、それを冊子に収めました。
 その時に学校の家庭科室で、お料理や藁細工の料理実習をしましたが、不便だったので、昭和58年に、味噌仕込みができるような調理場をつくりました。
 それまでは家で仕込んでいたのが、公民館で仲間たちと楽しくできるようになったのです。その味噌を行事で使った時、「この味噌おいしいから売ってちょうだい」と言われ、「もしかしたらこれは売れるかもしれない」と思ったのです。熊の女性たちは「何か思うと、その夢が膨らんで実現したくなるような思い」が今でもあるのです。
●『くんまの明日を語る会』から誕生

昔のくんま〜明日を語る会  昔、ここは宿場町で山の中腹を街道が通っていたそうで、参詣客が行き来して、江戸明治時代には3、4万人が訪れたくらい、とても賑やかな所だったそうです。昭和33年に、6箇町村が合併して天竜市になったときに、2507人いました。外材に林業が押され、だんだん不振になっていき、東京や名古屋に出た若者が昔は帰ってきたのに、そのまま都会に住むようになると、林業不振、過疎化、高齢化にどんどん拍車がかかっていきました。人口が半分に減った昭和60年に、「明日の熊を語る会」を開き、農業者や林業製材者など地域の人が意見を述べたのです。

「本物の味を商品化したい」
 女性の金田(現副理事長)が「今まで10年くらい改善グループをして、本物の味というものを私たちは作り出そうとしてきた。これをできれば商品化をしてみたい。しかも、ここへ来て、ここで味わう、そんな食堂や加工場をまがりでもいいからやれたらいいな」という夢を語ったのです。それが男性や行政、議会の耳に留まり、心に留まり、それぞれの立場で受け止めてくれたのです。


「農産加工施設『くんま水車の里』の誕生」
 その時に大きな問題がありました。建設費の地元負担金をどのように作るかです。でも、先人たちが「ここは地域のための」ということで、学校山という共有林を持っていたのです。昭和一桁の頃に、校舎を建てるために杉や檜を育てた山です。山を管理する財産区管理委員会に「是非、地域の賑わいが取り戻せるような村おこしになるようがんばるから、学校山を切って私たちのために使ってもらいたい」と要望書を書いたところ、管理委員会は認めてくれました。地区の財産ということで、昭和61年9月に地区全戸が加入する活性化推進協議会を設立し、婦人会など10人の女性が運営にあたりました。昭和62年6月に、31人で「くんま水車の里」という農産物を加工する女性達の活動が始まり、味の研究や商品開発、資金繰りをするために1年間公民館を借りながらがんばったのです。


「働き手の確保」
 昭和63年5月「かあさんの店」がオープンしましたが、また問題がありました。3分の2くらいが農家の女性で農繁期と観光シーズンが重なると、働ける人が減るのです。働く人を募集したのですがなかなか集まらなく、一人が「かあさんの店」の店長となり、非農家の女性や内職の人、子どもが小さくてパートをできない人を集めて、時給350円でがんばりました。




 ●働いて「まちおこし」をする

「ボランティアから雇用へ」
 「水車の里」は、運営をボランティアでしていました。でも、半年経った秋、お茶刈りとか農作業があるとやはり出にくく、ボランティアなので「代わって」とも言いにくくなりました。そこで、平成元年から時給350円払うことにし、平成7年からは時給700円で働いています。


「働いて収入を得る喜び」
 熊の女性は、お金を持っていても主人の「預かり銭」というか、家計を握るのは夫なのです。一々相談をしないと何も使えないという感じの農家の女性が多かったと思います。

 余談ですが、最初の給料をもらった時に、ある女性がうれしくてデパートでちょっと良い物を家族みんなに買ったそうです。仲間たちも家族それぞれに使ったので、その頃から舅が運転して嫁を送るとか、本当に家族から支えられる活動になってきました。

 やはり、お互いに得たものから賃金を払い就労の場にしたことで、仕事に責任を持てたり、働く意欲や自分の居場所ができたり、いろいろな面で大きな意味があったと思います。


「地域で働くということ」
 今は、「水車の里」は25人、「母さんの店」は7人で社員が4人あとはパートという働き方です。パートは75歳で退職なので、2人が辞めて新しい人が入っています。今は幸せ部と水車部の女性が31人います。仕事も増え、新しい組織で若い人も増えて、当時の平均年齢63歳が、今は51歳で、26歳の人もいます。給料は安いですが、プラスαはここを支えることだと言っています。この地区で働くと、高齢の舅、姑や家族が安心するのです。冬、浜松や三ケ日の方にみかん狩りに朝6時半に出て、夜6時過ぎに帰ってくるのでは、高齢の家族は不安です。でもここで働くと、何かの時にはすぐ帰れるし、休むこともできるので、子どもや高齢者はとても喜びます。

「くんまには、元気な高齢者が多い」
 「明日は水車の里に行くと思うと、今日は一生懸命家の仕事をやる。朝は身づくろいやお化粧して、楽しい思いで出てくる。そして今日1日こういうことをすると、若い人と話したりして過ごせる」と、お年寄りが言います。この交流も私たちの大きな財産で、だから活動が続いてきたのです。
 去年保健センターで、ここの高齢者がどうして元気なのかを調査したところ、「自分の仕事がある」からだとわかりした。仕事は収入の有無に関係なく、「明日晴れたら何をしますか」と聞いたところ、本当にみんな仕事をしているのです。地域の付き合いにも出るし、自分に家の中に役割がある人が全体の41.4%いました。
 ●活動目的にあう組織づくり〜NPO法人


 利益が出た時には配分するために、私達は地域おこしをしたつもりはないです。これは地域利益のために、地域の利益というのは「豊かさと優しさと楽しさ」で、私たちの1番の大事な思いです。心や経済が豊かに、そして環境や福祉に対して優しく、町づくりや人、ふれあいに対しては楽しさを、そんな豊優楽が地域の利益ではないかと思うのです。
 県のNPO推進室の人が、平成10年12月に「NPOとボランティア」の話をした時、「右手にビジネス、左手にボランティア」というのを「右手にスコップ、左手に缶ビール」と話したら、みんなが受け入れたのです。時々奉仕をしたり、勉強したり、時には飲んだり喋ったり、そんな交流で地域を何とかしようという活動がNPOだと知り、活性化推進協議会を解散して、平成12年3月に全戸加入のNPO法人にしました。
 ●地域ニーズから生まれた事業

 「たまり場『どっこいしょ』〜くんまのデイサービス事業」
 天竜市内の福祉施設に、10年程前から熊の高齢者がデイサービスに通っていましたが、平成11年5月、市がここの学校の空き教室でデイサービスを始めましたが、元気で参加できないお年寄りが多くいました。でも、お年寄りは家族がいても、昼間は1人で、寂しさは1人でも同居でも変わらないのです。それで、「みんなで溜まり場を作って思い出話でも喋るような所を作ろうね」と言っていて、作ったのが「どっこいしょ」です。
 生きがいハウス「どっこいしょ」の会場には、23の自治会にある「老人憩いの家」という集会場を使っています。10箇所で、月、火、水の中で始めて、こんにゃくと惣菜の加工施設で仕出しの許可を取りお弁当屋も始めました。2人が給食サービスを始め、市のデイサービスと合わせて月10回実費で配達しています。独居の高齢者30人程に夕食の配食サービスもしています。


 「外と交流でつくるにぎわい〜生き甲斐部」
 生き甲斐部は町づくり交流推進の事業が主で、ホームステイやグリーンツーリズムをしています。子ども向けの「静岡、森の体験講座」では、2泊3日のホームステイで、グリーン体験や森の体験、自然観察、手作り体験などをします。賑わいを作るということでは、ホタルを見る会。6月第3土曜日に1300人くらいホタルの川へ集まり、地域の人が交通整理や駐車場係りをします。




「山や川を守り続けることを子ども達に伝える〜ふるさと部」
 ふるさと部は環境保全の活動と位置づけられています。熊には子どもの水辺が3箇所あり、水車の里と熊平のオートキャンプ場、ホタルの里、で体験型の環境学習ができるように登録してもらいました。






◆過去の記事
 1.兵庫県高齢者生活協同組合
 2.もくもくファーム(三重)
Copyright (c) 2002-2005. Interaction co,ltd. All rights reserved